天邪鬼青い空の広がる時間に木陰で眠る、この時間が一番落ち着く。 爽やかに風が吹き体にあたるとひやりと腕が冷たくなるのさえ気持ち良い。 木の下で瞼を閉じる彼は、その独りの時間を楽しんでいた。 すると、ふと横に人の気配を感じて重い瞼を開く。 「こんな所で昼寝ですか、ゼフェル様?」 「…何だ、セイランかよ…邪魔するなよ。」 気配の人物がわかるとシッシッと腕で払い除ける様な仕草をした。 その行動にクスクスと笑いをもらしセイランはゼフェルの隣にすっと腰をかけた。 「邪魔するなって言っただろ…」 「僕がここに座るかどうかを決めれる程の権力は無いはずですが?」 「チッ…」 悔しそうに舌打ちをする彼に思わず『可愛い』と思ってしまった。 これを本人に伝えればもしかすると明日の朝日は拝めないかもしれないとも考えながら彼は手に持っていた物をすっと眼を閉じたままの彼の頬にあてる。 「わっ!冷てっ!?」 驚いて起き上がると頬にあたっていたのがペットボトルだと解る。 微笑みながら差し出す所を見るとセイランはそれをゼフェルに渡すつもりの様だった。 「悪ィな、貰ってやるぜ。」 「素直にありがとうって言えないかな?」 「…お前にだけは言われたくねぇなぁ…」 「はいはい、そうですか…あ、そういえばマルセル様やランディ様が探していましたよ?今日、誕生日パーティーだとかで。」 「あぁ、つまんねぇ事するなって逃げてきたからな。」 ミネラルウォーターの入ったボトルのキャップを外し一口飲みながらゼフェルは言った。 冷たい水が喉をすっと通り胃に入るのを感じる。心地良い。 「せっかくだから祝って貰えばいいのに。」 「ケーキ食ってプレゼント貰って帰るだけだろ…かったりぃ…」 「理由はいかにもゼフェル様だ。」 「変な奴だな、オレはオレだ。当たり前だろう?」 ゼフェルはおかしそうに笑う、口調とは逆の素直な笑顔を向けられるとセイランも自然と微笑える。 「ゼフェル様は自分を持っているんですね…それは酷く難しい事なのに。」 「出たな、詩人の遠回し攻撃。」 ゼフェルはニヤニヤしながら方耳を塞ぐ様なマネをして早く終らせる様に促す。 「酷いですね、僕の話を聞いて親睦を深めるのもたまには良いでしょう?」 「親睦ねぇ…水の礼に聞いてやるから続けろよ。」 もう一口、冷たいミネラルウォーターを胃に流し込みながらゼフェルは言った。 セイランと二人きりで話す機会もあまり無いので聞いても良いかと思った。 「僕の話は水と同じ価値ですか…参ったな…」 「もしかしたら水以下かもな、内容で判断してやるぜ。」 ペットボトルを口から離しセイランの方をちらりと見る。 その視線に気が付くとセイランはゼフェルの片手をゆっくりと触る、その行動にビクリとする。 「な…なんだよ…」 「話の途中で逃げられ無いようにね。」 「…逃げねぇから早く言えっ!」 プイッと向こうを向いてしまった彼にセイランはクスクスと笑いながら話始めた。 「自分を持つ…それが酷く難しい…人間はとても天邪鬼な生き物だから。」 「天邪鬼?」 「『逆の事を言う』って事ですよ、頭が良くても何も出来ないと言ったり、好きなくせにイジメてみたり…」 そう言って目を閉じるセイランに彼は笑いながらお前の事じゃん、と言った。 その言葉にセイランはそうかも知れませんね、と笑って答えた。 「天邪鬼か…確かに、人間ってそうかもな。」 「ゼフェル様もですよ、本当は誕生日祝われるのもまんざらじゃ無いのでは?」 「…さぁな…」 ゼフェルの表情は不思議な笑みが溢れているようだった。 「今日はおとなしく祝われてやるか…アイツ等、煩そうだしな。」 「そうですね、そう何度もある事じゃ無いですから。」 妥協するゼフェル。 セイランは立ち上がるとずっと続く木のトンネルを歩いて行った。 それを横目に見送ったゼフェルも立ち上がり膝についた木の葉をはらう。 コツンと足元に小さな包みがあたった。 開けてみると『誕生日おめでとう』と裏に書かれた有名な童話のキャラクターをモデルにしたウサギの置物が入っていた。 「また、ウサギ呼ばわりする気かよ-----あいつ、わざわざそれだけの為にきたのか?」 何故か顔が綻んでいる彼がマルセルとランディに発見されるまで後5秒---------。 〜Fin〜 |
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